米国では新型コロナウイルス禍を受けた在宅勤務の広がりや低金利などを背景に、住宅建設やリフォーム需要が増大。今年の住宅着工件数は約160万戸と、昨年(約138万戸)から伸びる見通しだ。中国でも住宅需要が伸び、材料となる北米や欧州産の木材価格を押し上げている。
そのあおりを受けたのが日本の住宅事業者や商社。木材のほぼ全量を輸入材でまかなっていた大阪市内の中堅事業者は「7月以降も同様の状況が続けば販売価格を上げざるを得ない。材料の調達が困難になり、すでに受注を止めた同業者もある」と明かす。木材の専門商社、丸紅木材(大阪市中央区)の清水文孝社長は「現在の木材価格の上昇は一般的な戸建て住宅だと、昨年より400万円くらいの価格上昇要因になる」と話す。
林野庁は4月、関連の業界団体に対し、実際の需要に基づいた適切な木材資材の発注や過剰在庫を抱え込まないなど、冷静な対応をとるよう協力を求めた。
輸入材の代わりに国産材で賄おうとする事業者もある。住宅用木材の約5割は国産材だからだ。しかし大阪府木材連合会の三宅英隆(ひでたか)専務理事は「戦後の木材輸入増を受け、国内では林業従事者が減少し、製材のサプライチェーンも貧弱。突然供給量を増やせといっても無理だ」と指摘する。
柱や土台の材料に国産木材のみを使用する京阪ホールディングス傘下のゼロ・コーポレーション(京都市中京区)の橋本正喜(まさき)取締役は「コロナ禍の間だけ国産材を利用するというのでは、木材事業者の経営は成り立たない。今回の問題を機に、国としても林業支援を強化すべきではないか」と話している。